なんだか最近のオレはおかしい。
胸がモヤモヤして心臓がギューっとなって頭がフワフワするんだ。
それもカイザーと一緒に居る時だけ!
この事を翔と隼人に言ってみたら苦笑いされるし、三沢や明日香、それに万丈目にまで呆れた顔された。
重病にかかったのかも知れないのに誰も心配してくれない。
早くなんとかしないとヤバいんだぞ!
この間なんてカイザーと居る時に頭がフワフワし過ぎて階段から落ちかけたんだからな!
カイザーが寸でのトコロで抱き寄せてくれたから助かったけどさ・・・。
あ、また心臓がギューってし出した!
うーん、何でだ・・・?
分からないから鮎川先生に相談してみようと思って保健室に行ったら、なんとカイザーも同じ症状にかかってるって教えてくれた。
同じ症状・・・。
あれ?今度は心臓がドキドキしてきた・・・。
何でだ?

「ごめんなさいね、十代くん。これは私には治せないのよ。でも治す方法はあるわ。それはね・・・」

鮎川先生が教えてくれた方法は症状が起きる原因であるカイザーとずっと一緒に居ること、だって。
えー、何それ・・・。
カイザーと一緒に居る事で本当に治るのかよ・・・。
その効力をオレは疑ってしまう。
でもオレは医者じゃないしなぁ・・・。
仕方ない。
このままじゃ大好きなデュエルにも支障が出てしまうし、ちょっと試してみるか!






・・・・・・という事があってオレは今、ブルー寮のカイザーの部屋に居る。
迎え入れてくれたカイザーはいつも通りで、本当に同じ症状にかかってるのか疑わしかった。
オレなんてカイザーの顔を見た瞬間、グワァッて感じで体が熱くなったぞ。
・・・本当に治るのかよ?鮎川先生・・・。

「十代?どうした」

カイザーのソファーでウンウンと唸っていたら訝しげに声を掛けられた。
顔を上げてカイザーを見ると、湯気が立つマグカップを手に持っている。

「何でもない・・・。それは?」
「ココアだ。飲むだろう?」
「あ、ああ」

カイザーの部屋に何故ココアの粉が?
飲むのか?カイザーが?
でもこの前甘過ぎるのは苦手って・・・。
いやいや、これは苦めのココアなのかも。
そう思って一口飲んでみたらオレの好きな甘い方のココアだった。

「カイザー、このココアって・・・」
「うん?ああ、それは購買で買ったんだ。お前が好きそうだと思って」

『お前が好きそうだと思って』、その言葉にドキンと心臓が跳ねる。

「ありがとう、カイザー。オレ、これ好きなんだ」

何で心臓が跳ねたのか分からない。
でも嬉しかったので顔を綻ばせて礼を言うと、カイザーはオレから顔を背けて自分の胸に手を当てた。

「カイザー?」
「あ・・・いや、気にするな」

カイザーはそのままオレから少し距離を開けて隣に座った。
その間もカイザーは心臓の辺りに手を当てたまま。
もしかして・・・。

「カイザー、今心臓がギューってなってるのか?」
「ギュー?」
「えぇっと、締め付けられるとか跳ねる・・・とか?」

オレの言葉にカイザーは驚いたように眉を上げた。

「よく分かったな。お前の言う通り、俺の心臓はその状態だ」
「やっぱり・・・。オレもそうなんだ」
「十代もなのか?」
「ああ」

何でだろうな?とお互い首を傾げる。

「俺のこの状態は特にお前といると顕著でな・・・。十代はどうなんだ?」
「オレもアンタといるとそうなるよ。他の奴らと一緒に居ても何にも起きないのにさ」
「そこまで同じか・・・。鮎川先生には相談したか?」
「おう。治療法を教えてもらった」

オレの言葉にカイザーは目を丸くする。
どうやら鮎川先生はオレに教えてくれた治療法をカイザーには教えてないみたいだ。
あなたは頭が良いんだからしっかり考えれば分かる筈よ、と言われたらしい。
丸投げじゃん、鮎川先生・・・。

「十代、その治療法はどんなものなんだ?」
「カイザーとずっと一緒に居る事」
「・・・」
「眉間に皺が寄ってるぞ、カイザー」

すっげー理解出来ないって顔してる。
思わず笑ってしまったオレはカイザーの眉間に手を伸ばし、皺を伸ばしてやった。

「・・・やめろ、十代。心臓に負担が掛かる」
「マジか。オレより症状酷いんじゃねぇの」
「そうかも知れん・・・。こんな接触で脈拍数が多くなるなんて異常だ。それなのにずっと一緒に居ろとは・・・」

困ったようにハァとため息を吐くカイザー。
その姿に胸がツキンと痛くなる。

「カイザーは・・・オレと一緒に居るの嫌か?」
「嫌じゃない。むしろお前と居るのは楽しい。だが、こうも心臓が気になってはな・・・」

お前とデュエルも出来ないと呟くカイザーの悲しそうな様子に胸が更に痛くなる。
重い・・・ズキンズキンとした痛み。
なんだか頭まで痛くなってきた。

「十代?」

カイザーがオレを呼んでいるのが聞こえる。
でも心臓が痛くて呻くようにしか声を出せなかった。

「・・・心臓が・・・ズキズキ・・・する・・・」

オレのその言葉にカイザーが慌てたように勢いよくソファーから立った。
何するんだろうと思ったら、いきなり強く抱き締められた。

「カ・・・っ、カイザー!?」

カイザーは何も言わずオレを抱き締め続ける。
伝わるカイザーの体温。
体温低そうと思ってたけど・・・普通だ。
意外と逞しい腕。
包まれて身動き出来ないけど・・・安心する。
広い胸に頭を預ける。
何か・・・良い匂いがする。
その時、オレは心臓が痛くなくなった事に気付いた。
それを抱き締めてくれているカイザーに言わなきゃと口を開いたけど・・・結局何も言わないでカイザーの背中に腕を回す。
ピクっとカイザーが若干動いたから、それ以上動かないように力を入れる。
カイザーはそれに応えるようにオレを抱き締める力を強くした。
そのまましばらくオレたちは抱き締め合った。

「・・・・・・十代」
「カイザー・・・」
「痛く・・・なくなったか・・・?」
「うん・・・」
「そうか・・・」

その事実が分かってもカイザーはオレから腕を解かない。
オレも・・・何でか分からないけど腕を外したくなかった。

「お前が心臓が痛いと言った瞬間、俺まで痛くなった・・・」
「カイザーも・・・」
「どうしてだろうな。その時、お前を抱き締めなければいけない気がしたんだ」

お前に少し触れただけで脈拍がおかしくなると分かっていた筈なのに、体が勝手に動いていた。
そう呟くカイザーは本当に不思議がっている様子だった。
「カイザー・・・、オレ、今すごく心臓がドキドキしてる」
「ああ、分かっている」
「でも・・・このドキドキは嫌じゃない」
「そうか。俺もだ」

さっきまでの焦燥感に駆られた心臓の動きとは違う。
ちゃんと分かる。
けど、何でドキドキするのか分からない。
答えが見つからない。
でも・・・・・・見つかんなくて良いかも。





その後オレたちは、デュエルする事なくずっと抱き締め合って・・・結局、一緒に昼寝までしてしまった。
最近モヤモヤして眠れなかったのに、カイザーと一緒だったら眠れたんだ。
よく眠り過ぎて、起きた時間が消灯間近な事に気付いたカイザーがちょっと焦ってるのが可愛いなぁ。
カイザーをまさか可愛いなんて思う日が来るなんて思わなかったぜ。
そんな事を考えてたら、またカイザーに抱き締められた。
ドキドキするけど、もう心臓は痛くならない。
カイザーの匂いと暖かさに心が満たされるようだ。
やっぱり鮎川先生に相談して良かった。
そう思ってカイザーの部屋に泊まった次の日に保健室に行ってこの事を報告したら、

「何でそれで進展しないのっ!?あーもう!じれったいんだから!!」

と言われ怒られた。
何で怒られたんだろう・・・。
じれったいって・・・何が?
さっぱり分からない。
カイザーとオレがそろって首を傾げる。
そんなオレたちを見て鮎川先生は呆れたようにため息を吐いたのだった。